2015年8月29日(土) 15:15
私は時々舞台の演出もするのですが、演出家ってほんとに大変な仕事だと思います。
初めて仕事で演出をさせていただいた時、自分は今までいかに恵まれていたかを実感し、
自分が演出家としてどうこうの前に、今まで私の女優人生を支えてくださった監督や舞台の演出家の先生に感謝の気持ちでいっぱいになり、
私を起用することで、ご自身もリスクを背負ってくださっていたことに気がつくのです。
女優の仕事は役づくりとして1センチ角の土地を5Kmどんどん深く掘っていく作業に思いますが、
演出家の仕事は3メートル四方の土地ををまずは真ん中の10センチぐらいのところまで掘り、それをどんどん中心から四方に拡げていく作業のようにおもいました。
作品を通じて自分の世界観が立ち上がるのはすごくおもしろい仕事と思いますが、
毎回毎回本番を観るたびに、ここはもっとこうしたら、この俳優さんがより魅力的にみえたのに・・・とか、
ここはもっとこうしたら、この女優さんの伝えたい言葉がより明確になったのに・・・とか、
本番で気がつくことがたくさんあり、女優の仕事よりも毎回毎回本番での後悔が大きく、精神的にも身体的にも良くないです(笑)
また昨年感じたことはこんなにも作品世界に没頭し、台本もすごく読み込んでいるのに、
あー、そうだ、今日は舞台に立たないのだった・・・(苦笑)となんだか不思議な感覚になりました。
その昔ですが「あの演出家は演出しない」と言っている共演者がいて、はてな(・・?)と思ったことがあります・・・。
話をよ~く聴いてみると、どうやら「演技指導をしない」「自分に対して、ダメ出しがない」ということのようでした・・・。
それは、そうですよ、だって、演出家は作品として、全体を作るのが仕事ですから、演技指導なんかしませんし・・・
ドラマの世界でも監督は演技指導はしませんし・・・!
演出からイメージの違いや言葉の伝わり方の指摘はあるかもしれませんが、演技指導はどちらかといえば、アクティングコーチの仕事です・・・
20代の頃、私に創作の喜びを教えてくださった演出家の先生は
「俳優として自立してほしい」ということをよく話しておられました。
俳優としての自立・・・自分の表現に責任を持ち、自分である程度の判断をして、人前に立つ・・・。今の私はこんなことを感じて、このように表現しています・・・といった「決め」みたいなものでしょうか。
みなさんが自分の表現を確立できる世界を願っています。
内田里美